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生埋め―ある狂人の手記より(追記) 
2008.06.21.Sat / 13:01 
生埋め―ある狂人の手記より (文学の冒険)生埋め―ある狂人の手記より (文学の冒険)
(2001/01)
サーデグ ヘダーヤト

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「悠久の時から我らは何を得るというのか、知っているものなら生まれてはこなかった」

この世を生きるということは、生きながら永遠に牢獄に繋がれることである。
1930年代の、しかも日本ではあまり馴染みのない(と思われる)中東イラン出身の作者による、人生の煩悶を描いた作品、とでもいえばいいのかな。
タイトルになっている「生埋め」という作品も、最後のSFぽい「S,G,L,L,」という作品も、今現在私たちが生きている世で日々起こっている煩悶、懊悩に共通するものがあるなぁ、と、読みながらしみじみと思ったのでした。
平たくいうと「鬱」かな?
ただ、ヘダーヤトの抱えているフォースの暗黒面は、単なる生活苦や社会情勢とかに起因するものではなく、千年近くも昔に詠まれたハイヤームの四行詩に書かれていることと変わらない。
すなわち、「なぜ自分は生きているのだろう。生きていかねばならないのだろう。どうせ世は無に帰するのに」ということを、学問や哲学方面から察知してしまったことだと思う。
まさしく「今この瞬間を生きていること」自体に絶望してしまったのだろう。


最後に収録されているというのもあるけど、印象深かったのは「S,G,L,L,」かな。
科学が進歩し、人の世を惑わす戦争、病気も、食糧事情もエネルギー問題もすべて解決した未来社会、人類はやっと古の時代からの不安から解き放たれたと思ったのに、なぜか全く新たな心配事を抱えて憂鬱に落ち込んでしまっていた。
計算によって、あと三千年ほどで地球そのものもなくなってしまうということが判明し、人々は絶望のあまり自殺を選ぶ者、集団自決を提唱するもの、などがあらわれ……という、何とも凄まじく陰鬱に湿った世界。
そして、物語は予想外の因子によって混乱を極め、痛烈な皮肉の中で幕は閉じる。

この作品が一体いつ書かれたのかはわからないけど、少なくとも半世紀後の「今」でも充分に想像できる現在と、更に未来の形が、ここにはあるんじゃないだろうか。

名門の生まれで学にも秀でて、パリやそのほかの国にも留学して、自殺未遂〜本当に自殺までしてしまった作者の悩みが、これらの作品の中に淡々と刻まれているのだろうなと感じました。
他にもいろいろ思ったことはあるのだけど、それは私なんぞがここでこうして書くよりも、巻末の訳者による解説を読んだ方が確実だと思うので、興味がある方はそちらでどうぞ(笑


それにしても、「生埋め」の主人公が、最後本当に死んだのかどうかが気になる。やっぱり死んだのかな。

---

追記:
随所にやはりハイヤームのルバイヤートを下敷きにした台詞や文章が織り込まれていて、それが一層この作品群に流れる無常感、無力感を強調してるような気がする。
先にルバイヤートを読んでおいてよかった。
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